配向効果と活性化効果
芳香環に置換基が一つ結合している場合、 求電子剤がさらに芳香環と反応すると3種の異性体が生じる。
- オルト(ortho:1,2-二置換)体
- メタ(meta:1,3-二置換)体
- パラ(para:1,4-二置換)体

オルト:メタ:パラの異性体比は、2:2:1の統計的な分布にはならず、ベンゼン環上の置換基の種類によって、2つの配向性に分類される。
- 「オルト二置換体とパラ二置換体を主に与えるもの(オルト-パラ配向性)」→生成物が生じる反応速度は速い
- 「メタ二置換体を優先して与えるもの(メタ配向性)」→生成物が生じる反応速度は遅い
反応速度が異なる理由
※芳香環上の置換基が電子供与性か否かが問題となる。
■置換基が電子供与性の場合
芳香環上のπ電子供与能力を高める。
例)アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アルキル基
<置換基がアルキル基の場合>
オルト-パラ配向性を示すと、アルキル基に結合した芳香環の炭素が第三級炭素陽イオンとなり安定化する。
これは、第三級炭素陽イオンは、空の2p軌道を持っているため、隣接したC-H結合に使われているσ電子が、炭素陽イオンの空の2p軌道と重なることができるため。
この被占軌道と空軌道の相互作用は、σ電子の非局在化によって炭素陽イオンの安定化をもたらし、反応を進める源泉となる。

<置換基がローンペアを持っている場合>
オルト-パラ配向性を示すと、置換基とそれに結合した芳香環の炭素の関係がオクテット則を満たし安定化する。よって、反応速度が上がる。

■置換基が電子求引性の場合
芳香環上のπ電子供与能力を低下させる。
例)ハロゲノ基、アシル基。カルボキシ基、アミド、エステル、スルホ基、シアノ基、ニトロ基
電子求引性の置換基は、芳香環に結合した原子が電気陰性度の高い原子と隣接し、また、不飽和結合を有している。そのため求電子剤がオルト-パラ配向性を示す際に、芳香環の炭素が陽イオンとなり、芳香環に直結した原子と電荷の反発が生じ、極めて不安定な配置となる。
このことから、結果として、メタ配向性を示す反応が進む。なお、積極的な反応ではないので反応速度は遅くなる。
