人工知能は蝶の夢を見るか?

引き続きイートモでの翻訳練習をしています。

課題文を翻訳し、訳例と比較することをひたすら行っているのですが、ゲーム感覚で楽しいです。

また、AIエンジンによる訳文とも比較しながら、AI研究をしています。

このような練習を繰り返しているうちに、翻訳をうまくいかせるコツのようなものが見えてきました。

本記事ではこの練習による気づきを、MTPEにも触れて書いていきたいと思います。

MTPEについては、現段階で理解している範囲での言及となりますので、認識がずれているかもしれません。個人的な理解の記録として書いていますので、ご容赦ください。

翻訳がうまくいくとき

どういった要件が組み合わさるとうまく翻訳ができるのか?

このようなことを考えながら翻訳練習をしているのですが、大きく分けて2つの要件が関係してくることがわかりました。

①脳が翻訳モードになっているとき

原文と訳文が等価になるということは、両方の文に共通するイメージが頭の中にあることだと思います。

翻訳とは、原文の情報を希釈して一段高い抽象度の情報を作り出し、それを再度具体化して訳文に落とし込む作業。

このプロセスを行いやすい脳の状態を「翻訳モード」と呼ぶことにしていまして、脳の中に透明な箱ができているようなものだと考えています。

②透明な箱に解像度が高いイメージを流しこみ、それを訳文に具現化したとき

訳文のクオリティは、原文と訳文の両方に共通するイメージの解像度に比例すると考えます。

このイメージとは、翻訳モードで作った透明な箱の中を流れるものです。

原文から情報を吸い上げる力、すなわち読解力が高ければ、質の高いイメージをこしらえることができます。

イメージの解像度が高いほど、それを訳文に具現化するためのアプローチの幅が広がるので、読み手に伝わりやすい文章が作成できると考えます。

以上のことから、翻訳のクオリティを上げるには、①→②のステップを踏むことが大事。

①のように脳が抽象思考しやすい状態(翻訳モード)になるには、私の場合、それなりに準備が必要です。

翻訳作業に入る前に20分くらい時間を取り、以前に訳した文章を利用して翻訳における思考プロセスをトレースしたり、風景画を見ながらギターを弾いて、その風景に合う音を探したりすることで、頭の中に透明な箱を形作っていきます。

また、②のように原文の情報を精度高く汲み取るために、普段の学習の際には、テキストで書かれた内容をイメージとして理解するようにしています。

例えばメディカル分野の勉強をする場合、細胞同士の相互作用がどのように行われているのかを、必ず図解して記憶。

この一手間により、翻訳時には原文を読んだ段階で、イメージが鮮明に浮かぶようになります。

MTPEについて

私が 情報を 原文から得て訳文へと落とし込む作業をしている間、AIはあきれるほどのスピードで翻訳(?)をしています。

しかし、AIが出力した訳文は玉石混交。

もし仕事でMTPEをすることになったらどういうステップを踏めばよいか、少しばかり考えたのですが、かなり手ごわいように思えます。

例えば下図のような訳をAIが出力したとします。

まずは出力結果が間違っていないか確認。AIはどういうデータを参照したのだろうかと推測します。

原文情報を自分の翻訳回路に通すと、AI訳は完全に的が外れたものではありませんが、もっと精度の高い訳語があると判断できます。

では、もし下図のようなAI訳だったとしたら?

先と同様に出力結果を確認するため、原文情報を自分の翻訳回路に通しますが、今回は大丈夫そうだと判断します。

ところが、ここでいう「Butterfly」は本来「青い蝶」のことを指していたとして、AIが出力したものが「黄色い蝶」を意味していた場合、これは誤訳です。

なんとなく蝶の形をしているからいいか、とAIの訳語に引きずられて、原文情報を正確に読み取る作業がおろそかになってしまいそうです。

AIはこなれた訳文を出力するときもあれば、訳語選択をミスしていたり、係り受けが間違っていたりと、出力結果が不安定。

ですので、今の段階では人間による修正が必須ですが、正しく修正するにも0から翻訳しなおす必要があったり、文体を統一するためにAIの文体にトーンを合わせたりと、かなり神経を使うことでしょう。

とりわけ、特許明細書のような権利文書のことを考えたら……。

MTPEをうまくこなせるようになるには、AIエンジンの癖を把握しなければならないと思います。

このことはピカソの絵を理解することと似ているかもしれません。

例えば、ピカソは「美人」についての解釈を下のような絵で表現しました。

(出典:https://www.artic.edu/artworks/84239/portrait-of-sylvette-david

私は残念ながら天才ではないので、何の背景知識もないままにこの絵を見たとしたら、「どこが美人なんだ?」と途方に暮れてしまうことでしょう。

しかし、この絵のモデルを知ったり、キュビズムというムーブメントやピカソの人生観について理解したとしたら、ピカソの表現方法に一貫性があることがわかり、絵の見方も変わってくるはず。

(出典:https://www.iwassylvette.com/press/

AIエンジンの出力パターンにも、一定の共通項があるようです。

AIが何を得意として何を苦手とするのか、時間をかけて研究すれば強力なツールとして使えるようになるはずだと考えています。

まとめ

翻訳をうまくいかせるには、抽象と具体を行き来できる脳の状態を作ることからはじめて、その脳に情報を解像度の高いイメージとして送り、それを再度文字の次元へと適切な表現で落とし込むことが必要であると理解しました。

AIはこのプロセスを無視して結果を出力するので、スピードはものすごく速いです。しかし確固たるイメージを見ていないので、翻訳結果が安定せず、人間による修正が必要となります。

翻訳をするにしてもMTPEをするにしても、原文の内容理解が大事だということを多くの方がおっしゃっていますが、本当にその通りだと思います。

「イメージを見る」という人間にしかできないことを、真正面から鍛えぬいていこう。

この記事を書きながら再度決意した次第でございます。