紫外線UVCは新型コロナ対策に有効か?

NYタイムズで、室内の空気中に漂うコロナウイルスを駆除するのに、紫外線(UVC)を有効活用できるのではないか、という記事を目にしました。

実際にニューヨークの地下鉄ではUVCを利用した殺菌実験が始まったようです。

アフターコロナ、ウィズコロナでは人々の意識が変わって、以前の生活にNOをつきつけることが多くなることでしょう。

オフィスやライブハウス、電車という、いわゆる箱ものに対しては、ウイルス対策がなされているかシビアに求められることに疑いはありません。

また、個人でもポータブルな除菌装置を持ち歩くなど、できるだけの対策はしたいものですよね。

では、UVCはどのようにしてウイルスを不活化するのでしょうか?

紫外線UVCについて

紫外線は目に見えない光の一種です。光は波の性質を持っており、波の長さによって光の種類が分けられています。

私たちが色として感知できる光は可視光線といい、波長は380~780nm。可視光線で一番波長が短い380nm付近の光は、私たちの目では紫として認知されています。

出典:http://ryuto.jp/light/

この380nmよりも短い波長の光を“紫”外線といいます。紫として見える光の範囲から外れているということですね。

さらに、紫外線はその波長によってUVA (320~400nm)、UVB (280~320nm)、UVC (200~280nm)に大別されます。

太陽光に含まれる紫外線は主にUVAであり、またUVBの一部も混じっています。

波長が290nmよりも短い紫外線は地球に届きません。なぜならばオゾン層によりカットされるからです。

出典:https://sweb.u-shizuoka-ken.ac.jp/~photobio/hikari_research_outline.html

光の波長は、短くなるほどエネルギーが増して生命体にとって危険なものとなりますので、このオゾン層によって私たちは有害な紫外線から守られているわけですね。

一方で、このエネルギー量の多い紫外線は有効利用できる場合があります。

そうです。殺菌のために、通常地球には届かない紫外線UVC (200~280nm) が利用されています。

紫外線UVCは、菌やウイルスなどのDNAやRNAに吸収される性質を持ちます。

紫外線を吸収したDNAやRNAは破壊されるので、これにより菌やウイルスは心臓部を撃ち抜かれたように死滅していくのですね。

出典:https://www.stanley-components.com/jp/uvc_technology/

紫外線を利用した医療用殺菌装置

紫外線を使った殺菌技術は特別新しいものではなく、多くの特許発明があり、医療にも応用されています。

例えば、シャープによる医療用殺菌装置は、手術時に紫外線(UVC)を利用して殺菌を行い、感染を防ぐ目的のものです。

出典: 特開2018-126522 医療用殺菌装置及びその使用方法、並びに、医療具及びその使用方法

UVCをレーザー光線として手術部位に当てて菌を除去するわけですが、この装置のポイントは、同時に可視光線も出力して、どこに紫外線を当てているか分かるようにしていることです。

また、ヒトの細胞に影響が出ないように工夫されています。

UVCは紫外線の中でも波長が短くエネルギーが強いだけに殺菌効果があるわけですが、ヒトの皮膚を通過しにくい都合の良いUVC波長が存在します。

下記のグラフでは波長222nmと254nmのUVCが比較されていますが、それぞれをタンパク質に向けて照射した場合、どれくらいUVCが吸収されるのか、あるいは吸収されず透過するのかを表しています。

出典:https://clean.ushio.com/ja/safety/

同じUVCでも波長254nmのものと比べて222nmのものの方が10倍以上タンパク質に吸収されやすいことが分かります。

また、下記のグラフはそれぞれのUVCが皮膚の厚みに対してどれくらい透過しているのかを表したものです。

出典:https://clean.ushio.com/ja/safety/

222nmのUVCは皮膚を透過しにくいようですね。

すなわち、皮膚の内部までUVCが浸透しないので、皮膚にとって安全だということが分かります。

出典:https://clean.ushio.com/ja/safety/

先に紹介した医療用装置のUVCは、波長を190~230nmの範囲に収めているので、殺菌能力を保ちつつ、ヒトには安全な設計がなされています。

このように安全性を担保したうえでUVCを利用することは、ウイルス対策に効果的だということが分かりますね。

まとめ

目に見えない光の一種である紫外線の中でも、ウイルスには厳しくヒトには優しい波長のUVCを利用した新型コロナウイルス対策がすでに始まっています。

日本のウシオ電機も紫外線照射装置を開発していますが、こういった殺菌系のインフラは今後多くの場所で必須となってくるのではないでしょうか?

また、UVCを利用した個人でもできるウイルス対策として、ポータブルな除菌デバイスも発売されています。

目に見えないウイルスを相手にしているので、効果についてははっきりと分かりませんが、使った方が使わないよりマシという「期待感(精神衛生も兼ねての安心感)」を得るためにも、これからはこういったデバイスが“お守り”のようにポータブルされるかもしれませんね。