弦を伝わる横波の速さを導出する

物理の学習で波に関わる内容を学んでおり、弦を伝わる横波の速さを導出する方法を勉強した。公式を覚えるのではなく、なぜ公式が成り立つのかを理解することが大切なので、基礎レベルを超えた内容についてじっくりと取り組んでみたい。

導出方法前半部

公式は以下のように表される。

弦の張力:S
弦の密度:ρ
弦に伝わる横波の速さ:ν

弦に伝わる横波の速さを求めるに当って、下図の赤丸部分のような弦の微小部分に注目する。

微小部分dLを円の弧の一部と考え、円の半径をr、円の中心をOとし、dLの両端P及びQからOに向けて線を引いた際に生じる角をdθとする。

dLにかかる張力Sは、P及びQの接線上にかかり、弦の歪みを戻す方向に働く。

なお、Sx及びSyはSをベクトル分解したものを表す。

dLに加わる張力Sが円の中心Oに向かう力はfであり、左右のSx成分を足したものである。(dLが限りなく微小になっても0にはならないので、必ずSx成分は2つ存在する)

よって、f=2Sxの関係が成り立つ。

次に Sxの大きさを求めるために、以下のような紫と赤の三角形に着目する。

2つの三角形は相似であるため、

を導出できる。

θを限りなく小さくするということは、P及びQの接線が交わって作る角度の値が大きくなり、下図の赤線が短くなるのと同じ原理でSxも限りなく小さくなっていく。

従って、sinθ≒θとなり、(双方とも非常に小さい値なので、同等と捉えて良い)

先の式にこの概念を導入すると下記のように表せる。

ラジアンの考え方により、dθは弧の長さdLを半径rで割った値なので、

となり、

と表すことができる。

導出方法後半部

一方で、弦にかかる遠心力Fについて考える。

遠心力は向心力の反作用の力であるので、遠心力の大きさを求めるにあたり、向心力の大きさに注目したい。

波はdL上で等速円運動をしていると考えられるため、速度の大きさは一定であるがその向きは常に変化しており、加速度が生じている(向きを変えるには加速度が必要)。

dLが限りなく小さくなった環境、つまり波がほんの少しの時間でP点からQ点へ進んだ状況では、各点における速度の差が加速度の大きさであり、円の中心に向かっている。この力が向心力である。

θが限りなく小さくなることで、加速度と同様に、Sxも限りなく小さくなるので、2Sx=fの大きさは向心力に等しいとみなせる。

遠心力と向心力は作用反作用の関係にあることから、

が成り立つ。遠心力は

で求められるので、代入すると

であり、ここでmは弦の質量を当てはめ、

(速度ν>0) が成り立つ。

つまり、この式は下記の内容を表している。

  • 波の速さは弦の張力が大きいほど大きくなる
  • 波の速さは弦の線密度が大きいほど小さくなる

<参考サイト>
https://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~masako/exp/melde/riron/riron1-2.html